ifLink EX
「IoTで共創力を育む革新的教育プログラム」
2024年10月17日に開催された「ifLink EXPO」では、IoTサービスのビジネス共創をテーマに、開発者とユーザーが一堂に会した。このイベントでは、作り⼿と使い⼿が、ifLinkで安・迅・短で共創する「人が使いたくなるIoTサービス」のビジネス共創ストーリーやそこから生まれた具体的な製品・サービスが紹介された。共創ステージでは、事業化に向けて取り組む会員企業による成果「共創ストーリー」の発表が行われた。本記事では優秀賞を受賞した「ifLink EXで共創環境デファクト化計画」について紹介する。
受賞者紹介
■上段左から:東芝デジタルソリューションズ株式会社 ifLink推進室 丸森 宏樹/株式会社グローバルキャスト 成長戦略グループ 執行役員 神谷 和幸/青稜高等学校 SDGs部副部長 杉山 実緒/青稜高等学校 SDGs部副部長 佐貫 奈菜/アプライドロボット株式会社 COO 張 耀光/株式会社レスター デバイスBU デバイス事業開発本部 東日本新規ビジネス開拓部 東日本新規ビジネス開拓課兼 第二営業本部 新規BIZ開拓部 新規BIZ開拓課 大脇 哲二
■下段左から:株式会社JTB 企画開発プロデュースセンター 企画開発課 営業開発プロデューサー 平尾 篤之/青稜高等学校 SDGs部部員 荻野鴻志/青稜高等学校 SDGs部部員 黒田祥太郎/青稜高等学校 SDGs部部長 小松功汰/青稜高等学校 SDGs部部員 関響
「技術を使った行動を起こせる」自信へ
「オオギリ」から生まれた教育ツール:ifLink EXの誕生秘話
IoTを活用した共創環境の学習ツール「ifLink EX」が注目を集めている。このツールは、ifLinkオープンコミュニティの共創活動から生み出されたもので、小中学生から社会人まで幅広い層を対象に、IoTを活用したアイデア創出と問題解決能力の育成を目指している。従来の大喜利形式のアイディエーションツール“ifLinkオオギリ”を発展させ、体系的な教材として整備したことで、教育とテクノロジーの融合における新たな可能性を示すものとして期待を集めている。
ifLink EXの開発は、約3年前に始まった。きっかけは、ifLinkオープンコミュニティの会員活動において、ifLinkオオギリを用いた共創のシーンが頻繁に見られるようになったことだった。この形式が共創の理解を深める上で効果的だと気づいたコミュニティメンバーたちは、教材化を構想。東芝デジタルソリューションズと協力し、約2年の歳月をかけて現在の形に完成させた。
学校から自治体までifLink EXの多彩な実践例
ifLink EXの特徴は、その多様性と柔軟性にある。小中学生から高校生、大学生、社会人、自治体職員まで、各対象層に合わせたカスタマイズが可能。それぞれの層に強みを持つ企業とパートナーシップを組むことで、効果的な展開を目指している。さらに、プログラム参加者の行動と成果を評価・認定するifLink認定制度(ページリンク)を導入し、単なる知識習得ではなく、実践的な行動と成果を重視したアプローチを取っている。
ツールの核となるのは、IoTを活用した企業共創型課題解決プログラムだ。JTBが展開する「ifLinkスタートアップCamp!」では、主に中高生を対象に、UX教材を使用した課題解決プロセスの学習に始まり、コミュニティ会員企業の多様なデジタル技術の学習を経て、アイデアの具現化と企業へのプレゼンテーションへと展開している。
実際に、品川区の青稜中学校・高等学校でトライアルが実施された。参加した高校生は「最初は難しそうだと思いましたが、実際に取り組んでみると、身近な問題をIoTで解決できるというのがおもしろかったです。特に、カードを使ってアイデアを出す過程が楽しかったです」と語る。
生徒たちは「AIカメラを活用した電車の混雑状況可視化システム」などの革新的なアイデアを発表し、その実践力が高く評価された。このアイデアを考案した青稜高等学校の荻野さんは、「普段の通学で感じていた不便さを、技術を使って解決できるかもしれないと気づいたのが大きな発見でした。企業の方からフィードバックをいただいた時は、本当にワクワクしました」と興奮気味に語った。
SDGs部の副部長を務める杉山さんは、「ifLink EXを通じて、環境問題や社会課題に対するアプローチの仕方が変わりました。技術を使って具体的に行動を起こせるという自信がつきました」と、プログラムの影響を語った。
自治体向けのプログラムでは、地域特性を活かしたカスタマイズも行っている。地元の観光名所をシーンカードに組み込み、地元企業の技術をモジュールカードに追加することで、シティプロモーションや企業版ふるさと納税の要素も取り入れられるなど、地域活性化にも貢献する可能性を秘めている。
自治体向けのプログラムでは、地域特性を活かしたカスタマイズも行っている。地元の観光名所をシーンカードに組み込み、地元企業の技術をモジュールカードに追加することで、シティプロモーションや企業版ふるさと納税の要素も取り入れられるなど、地域活性化にも貢献する可能性を秘めている。
▶小中学生から社会人まで幅広い層で活用可能
▶IoTを活用したアイデア創出
▶実践的な行動と成果を重視したアプローチ
ifLink EXの未来戦略
グローバル展開と新分野開拓
今後の展開としては、各分野に強みを持つ企業とのパートナーシップをさらに拡大し、多様なニーズに対応していく予定だ。
ifLink EX開発の中心人物であるアライドロボットの張氏は、「私たちの目標は、このプログラムを通じて次世代のイノベーターを育成すること。技術はスピーディに進化しますが、それを使いこなし、社会に還元できる人材を育てることが重要だと考えています」と語る。
プログラムに参加したJTBの平尾氏は次のように語る。「高校生たちの柔軟な発想には驚かされました。同時に、彼らに自社の技術や理念を伝える良い機会にもなりました」。
最後に、青稜高等学校のSDGs部・部長の小松さんの言葉を紹介しよう。「ifLink EXを通じて、自分たちのアイデアが社会を変える可能性があることを知りました。今まで漠然としていた将来の夢が、少し具体的になった気がします。これからは、技術と社会の関わりについてもっと学んでいきたい」。
このように、ifLink EXは次世代のイノベーターたちに新たな視点と可能性を提供し続けている。彼らの成長と、それによってもたらされる社会の変革に、今後も大きな期待が寄せられている。
ifLink EXは、ifLinkオープンコミュニティの強みを最大限に活かすことで、単なる教育ツールを超えて多様な人々をつなぎ、新たなイノベーションを生み出す触媒という役割を担っている。
その理由の1つとして、ifLink EXを利用することで、企業と学生、ユーザーとメーカーが共通の言語で対話できるようになったことが挙げられる。実際に、本プログラムを体験した高校生が、企業の方と名刺交換をする場面も見られた。ifLink EXは、異業種間の協力、アイデアの実証、事業化支援という一連のプロセスで、教育とIoTを融合させている。
今後もこのコミュニティの力を最大限に活用し、IoTを活用した共創環境のデファクトスタンダードとなることが期待される。教育、ビジネス、地域振興の垣根を超えた革新的なプログラムの今後の展開に注目したい。
ifLink EXPOでの登壇の様子